【特集】こんなに増える来年度からの中学教科書!!!第2回(国語・理科・社会)

更新日時:2011年12月05日

前回は、概要と英語・数学の教科書改訂について見ていきましたが、今回は国語・理科・社会について、詳しく見ていきたいと思います。(図表はWEBアドバンス通信では省略)

【国語】
今回の改訂では「思考力・判断力・表現力」を養うための「言語活動」の重視が大きなポイント。その中核を担う中学国語の教科書だからこそ、ページ数が増えただけでなく、内容にも大きな変化があります。

(1) 常用漢字が196文字追加!
2010年11月の常用漢字の改定により、196字が追加、5字が除外となり、新常用漢字は 2136字に増加しました。これはデジタル時代ではかな漢字変換の恩恵により、より多くの漢字を負担なく日常的に使えるようになったことを反映しています。
しかし、その反面、携帯やパソコンで自動変換してくれることから、漢字の読み書きを苦手としている生徒が多くいるのも事実です。

また、挨・拶・曖・宛・畏・椅といった字が常用漢字となったことで、例えば、挨拶(あいさつ)、曖昧(あいまい)、宛先(あてさき)、畏敬(いけい)、椅子(いす)などの表現が教科書に登場することになりました。
これらの漢字は、中学校の定期試験では、書きとりまで問われる可能性がありますので、練習が必要です。
また、実際の高校入試でも、これらの新常用漢字が、問題文や課題文には入ってくる可能性があることを踏まえて、最低でもしっかりと読めるように学習を進める必要があります。

(2)教科書のボリュームアップ 1.5倍~2倍へ
現行版教科書と比べ、多いものでは1.5倍から2倍にボリュームアップしています。(図1)

(3)教科書の参考書化 「鑑賞」から「技能」へ

新しい国語教科書の特徴として、従来型の学習内容であった文章を味わう「鑑賞」に比べ、文章の構成を理解して把握していく「技能」のトレーニング的な内容のウエイトが高まります。
例えば、小説や説明文などのあとに学習課題やアドバイスが掲載されており、この内容に変化が表れています。「場面分け」や「構成の確認」といった具体的な作業指示が増え、テクニカルな内容が盛り込まれています。(図2)
また、教科書の巻末や別冊にも、学習課題やアドバイスがまとめて掲載されている教科書もありますので、今までの教科書のイメージとは異なり、参考書のような感じになると思われます。(図3)

加えて、教科書によっては、より参考書に近い内容も説明されています。

要約の技術的な解説
要約という作業をテクニカルに説明している教科書もあります。
  1.重要な文に線を引く
  2.重要な文をつないで要約文をつくる
  3.更に削ったり言い換えたりして、簡潔な表現にする
要約の手順を3ステップの作業に集約し、さらに、
【線を引くときのヒント】
  ・具体例には線を引かない
  ・補足的な内容には線を引かない
  ・言い換えている場合には、簡潔にまとめているほうに線を引く
問題の解法、気をつけるべきポイント、例題と解答、練習問題という構成は、非常に学習参考書的な手法であり、教科書が塾の国語指導に近づいてきているといえます。

(4) 近代文学作品の復活

新学習指導要領における国語の大きな変更点として話題になったのが「近代以降の代表的な作家の作品の掲載」。
これまでも「坊ちゃん」(夏目漱石)、「高瀬舟」(森鴎外)、「走れメロス」(太宰治)などが掲載されていましたが、全体としては減少傾向にありました。
しかし、新学習指導要領の「伝統的な言語文化に関する指導の重視」を受けて、文豪作品の回帰傾向がみられます。
一方では、浅田次郎、重松清、あさのあつこら人気作家の作品も多く扱われています。大幅にボリュームアップした国語の教科書は、読みごたえもタップリの内容に変貌しています。

さらに、こんな改訂も追加されます。

伝統的な言語文化
「伝統や文化に関する教育」を充実させるために、歴史的背景などに注意して古典を読むこと(中学3年生)など、古典に関する指導も重視されるようになります。

メディアリテラシー
新聞やテレビなどのニュースが編集されていることを学び、同一の事象についての複数の文章やグラフ・表などを読み比べ、評価するなど、メディアリテラシーの育成も図られます。

【理科】 1分野・2分野のくくりがなくなり、学年別の編成へ。
      ボリュームも大幅アップ
1分野、2分野の上下巻という分冊形態から学年別に変わり、教科書全点合計ページ数の平均は、現行版教科書と比較すると約45%増。5教科中もっともボリュームアップ率の高い理科は、内容的にも最も大きな変化のあった教科です。

(1) 数多くの学習項目が復活!
かつての中学理科の花形だったイオンが、現行版教科書でも扱っている「化学変化と電池」「酸・アルカリ」「中和と塩」にも付加され、すべての学習内容が揃って、完全復活しました。

このほかにも、
中1:
水圧・浮力、種子をつくらない植物のなかま
中2:
電力量・熱量、生物の変遷と進化
中3:
仕事とエネルギー、遺伝の規則性と遺伝子

など数多くの項目が付加されたことにより、学習内容量も難易度もレベルアップ。
ページ数平均45%増は伊達ではありません。計画的な学習でしっかりと基礎を固めつつ、思考力・応用力を伸ばしていく必要があります。

(2) 問題数は平均1.8倍、それに対して授業時間は1.3倍
主要3社の新教科書で扱われている問題数(3年間合計)の変化を調査したのが以下のグラフです。
3社平均で問題数1.8倍という驚くべきアップ率で、教科書のページ数アップ45%にも増して実質的内容の増加量の多さを実感することができます。(図5)

それに対して3年間を通した授業時間数の増加は、290時間→385時間で1.3倍に留まっており、授業時間あたりの内容密度は140%にまで高まることになります。こうした観点から、主要5教科の中で理科が最も生徒へ負荷がかかると教科となりそうです。「知識・技能」の基礎固めと定期テスト対策から、「思考力・判断力・表現力」などPISA型学力も問われる高校入試対策まで、学習計画の再構築が課題となると思われます。

(3) 実験や観察の切り口で構成される問題が主流!
「物理」「化学」「生物」「地学」というカテゴリーは、新学習指導要領上は、それぞれ「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」という表記に変更となりました。表記の変更はあったものの、実験・観察を重要視する姿勢はより顕著になりました。新教科書の問題も、実験・観察を起点とした切り口で構成されるものが主流です。(図6)

【社会】 ゆとり教育以前の教科書へとリターン
地理では、日本地理・世界地理とも全地域についての学習となり、歴史では世界史項目が復活しますので、より詳細に学ぶことになります。

(1) 地理は「2、3の国や県を学習」から「世界と日本の全地域学習」へリターン!
新教科書の「地理」は、都道府県、世界の国々について2、3ピックアップして「調べ学習」を行うというスタイルから、世界や日本の諸地域を一通り学習するという従来の構成に戻ります。(図7)

(2) 日本の7地方を7テーマで考察
日本の諸地域は、北海道から九州まで7地方に分けて、それぞれについて「環境問題・環境保全」「人口や都市・村落」「歴史的背景」「産業」「他地域との結び付き」「生活・文化」「自然環境」の7テーマのどれかを切り口に現在の課題を考えさせるようになります。(図8)

(3) グラフや統計資料を読み取る
グラフや統計資料を読み取って、人口構造などの観点から日本や世界を見ていくという切り口は、継承されています。(図9)

(4) 「四大文明」など、世界史が復活
新教科書の「歴史」の大きな変化として、「世界史」の復活が挙げられます。
「四大文明」や市民革命、産業革命など多くの項目が教科書の本文に戻ってきました。さらに、重要語句は太字(ゴシック体)になる等、日本史も含めて、歴史全体を通して、覚えるべき用語が大幅に増加しました。(図10)